お墓参りと言えばお墓のお掃除などをして、お線香やお供え物をご先祖さまや故人へお供えし、日頃の感謝を込めてお参りすることが中心となりますが、なぜお線香をお供えするか考えたことありますか? いつもみんながしているから、ただお供えしていたけれど実際の所、「なお線香をお供えするかわからない…」という方が多いのではないでしょうか。ここでは今まで実際に考えたことがなかったお線香を供える意味やお線香の供え方などをご紹介したいと思います。実はお線香とお墓参りの関係には興味深いことがたくさんあるのでぜひ最後までご覧になってみてください。
お線香の歴史について
元々は古代インドで作られたものが発祥とされていますが、日本では仏教が伝来した飛鳥時代に日本へ伝わったとし、当時は朝廷に献上したことなどが「日本書紀」に記されています。それ以来、お線香は仏前を清め邪気を払うなどの宗教的な意味合いが強いものでした。その後、唐の僧、鑑真(がんじん)が日本へ渡来してから、貴族たちは供香だけでなく日常生活の中でも香りを楽しむようになってきました。今のお線香のような細長い棒状のお線香が広く知れ渡ったのは江戸時代初期からとされており、中国からお線香の製造方法も伝わってきたので、庶民にもお線香が浸透し、多く使われるようになりました。時代の流れに伴い、現代の日本人の暮らしにあった新しい香りや煙の少ない物などの開発が進んで、さらに人々の生活に浸透され、今に至っています。
お墓参りでのお線香を供えるその意味とは?
お墓参りや仏壇へお線香を供えることには3つの意味があるとされています。
●ご先祖さまや亡くなられた故人の食べ物
香りは亡くなった故人のとっておきの食べ物とされており、特に故人が亡くなられてからの四十九日が過ぎるまでの期間に極楽浄土まで旅をするとされていて、その際の故人の食事になるとも言われています。四十九日の期間が過ぎるまではお線香を絶やすことなく焚き続けるという宗派などもあります。お墓参りではお線香をお供えしてご先祖さまや故人へ食べ物を差し上げるという意味があります。
●場所を清め、自分自身の身も清める
お墓参りでお線香を焚くことは、土葬の時代に死者の臭いを消したり、近寄ってくる動物などを寄せ付けないために香の香りと煙が使われていたことから、その場所を清める為につかわれていたということから、現在でも同じような意味で続いています。そして人間とは日々汚れるものであり、その香りが汚れを取り除き、お線香の鎮静作用で、人々の心身を煙で清め、その香りで心を落ち着かせる効果があると言われています。
●煙を通じてご先祖さまや故人に思いを伝える
お墓でお線香を焚くことで、その香りと煙で清められた場所の中、日頃の感謝の気持ちをお伝えし、日々の出来事や、報告したい事などを心の中でご先祖さまや故人に話すことにより、その思いが伝わるとされています。お墓参りの時はお線香をお供えする本数などもありますが、その場を清めるため束のお線香に火をつけて、一人ずつお線香をあげ、残った分はすべて香炉(皿)へお供えします。
お線香の供え方
●まずはお線香に火をつけます
お線香に火をつける時は束で火をつけてその後、束でお供えするまたは宗派などにより所定の本数を一人ずつお供えしていく事になります。一つ注意しなければいけない点は、お線香に火をつけた時についた火を口で吹き消してはいけないという事です。なぜかというと、人間の口から出る息は不浄のものと考えられており、仏様にこれからお供えするお線香を口で吹き消すことは無作法とされているからです。そのようなときは火のついたお線香を上から下にスッと素早く下ろします。一度で消えない場合は何度かすると消えます。手で扇ぐことも余り良いマナーとはいえないので、上から下ろす消し方を試してみてください。
●お線香は一人何本お供えするの?
これは良く迷う点ですが、宗派により本数が違います。また、地域によっても宗派に関係なく本数が変わったりしますので、心配がある方は年配者に確認してからお供えするようにすると良いでしょう。
- 臨済宗、曹洞宗、日蓮宗「1本」
- 浄土真宗「1本を香炉の大きさに合わせて折って寝線香(火がついている方が左に来るように寝かせて供える)」
- 天台宗、真言宗「3本」
香炉に線香を立てない宗派もありますし、地域の風習などにより様々ですので、ここでは一般的な本数をご紹介しています。
●お線香をお供えする順番は?
お供えする順番は故人から一番縁の近い順にあげていくと良いでしょう。その後は年配者の方から順にあげて行きます。
最後に
お線香は煙と香りがとても大切だというお供え物だという事が分かったと思います。その為、お墓参りへ行くときなどは日頃から使っている香りのよいものなどがあればそれをもっていくなど、出来るだけ良いものをお供えして差し上げると、さらにご先祖さまや故人の方へ思いが届くのではないでしょうか。